カーボンニュートラル(温室効果ガスの人為的な排出量と吸収量の均衡)の実現が世界的な目標となる中、省エネルギー化の推進は、事業者にとって、地球環境保全への貢献だけでなく、エネルギーコスト(電気料金等)の削減につながり、経営上のメリットをもたらします。省エネルギー化に向けた取組みを進めるためには、自らのエネルギー使用状況を把握し、どんな省エネルギー化の方法があるのかを知ることが第一歩となりますが、これを支援する施策のひとつとして、「省エネ診断」があります。今回は、地元金融機関のコザ信用金庫が、省エネ診断のなかでも手軽に受診できる「省エネクイック診断」を受診しました。
カーボンニュートラル実現に向けて取り組むコザ信用金庫
沖縄市上地に本店を置くコザ信用金庫は、地域に根ざした金融サービスを提供し、地元経済・社会の発展に貢献しています。2015年3月に完成した同金庫本店において、ビル内自己消費用の太陽光発電システムの導入や、LED照明、建物の緑化等により環境負荷の軽減を図るなど、コザ信用金庫では、再生可能エネルギー活用、省エネルギー化等の取組みを積極的に進めています。


今回、コザ信用金庫では、沖縄市の「ゼロカーボンシティ」実現に向け、さらなる省エネルギー化を推進するため、本店近くの「コザ信用金庫別館」において、省エネクイック診断を受診することとしました。
省エネクイック診断とは?

省エネクイック診断とは、省エネの専門家(診断機関)が飲食店・工場・ビル等を訪問し、エネルギー管理状況の診断を実施したうえで、設備・機器の運用改善や設備投資の提案を行い、事業者のエネルギーコスト削減に協力するものです。今回、診断を行った省エネの専門家、株式会社琉球エコライン代表取締役の上原さんは、「省エネクイック診断は、10種類の設備のなかから、希望する設備のみを選択して受診でき、比較的短時間でニーズに応じた診断が可能なため、初めて省エネルギー化に取り組む事業者にもおすすめです。また、設備投資を伴う提案(投資改善)だけでなく、機器の最適な使い方など、費用が掛からず即日実行可能な施策(運用改善)も提案可能です。」と説明します。

省エネクイック診断の流れ
省エネクイック診断は、次のような流れで実施します。
①診断機関(専門家)への受診申込みののち、②受診事業者と診断機関の間で日程等の事前調整を行い、③診断機関が現地を訪れて設備の状況等を確認したうえで報告書を取りまとめ、④受診事業者に診断結果を報告し、⑤受診事業者が診断機関に料金を支払う、という流れで行われます。

それでは、どのように省エネクイック診断が行われるのか、流れに沿ってみていきます。
①申込み
省エネクイック診断は、診断機関(専門家)への受診申込みから始まります。
はじめに、省エネクイック診断の特設WEBサイトから受診申込みを行います。WEBサイトの申込フォームでは、事業所の情報や、希望する診断対象設備等を入力していきます。
今回は、コザ信用金庫別館において特にエネルギー使用に占める割合が大きいと考えられる照明設備と空調設備を対象に申込みが行われました。
②事前調整
申込みを受けた診断機関は、申込事業者に連絡を取り、必要書類(受診対象事業所の電気使用量がわかる資料、診断設備に応じた建物の図面)の提出を依頼し、現地診断の日程を調整します。必要書類の提出を受けた診断機関は、現地診断に向けた準備を行います。
③現地診断
現地診断当日、診断機関の上原さんがコザ信用金庫別館を訪れました。



建物の図面を参照しながら、各フロアの機器の状況をチェックしていきます。照明設備については、機器の設置状況や稼働状況、型式等を確認します。空調設備については、設備の種類や清掃状況、温度設定、空調能力等を確認するほか、屋上の室外機についても、設備の状態や型式等を確認していきます。現地診断は、およそ2時間にわたって行われました。
現地診断を終えた上原さんは、オフィスに戻り、現地で確認した情報も踏まえながら、コザ信用金庫別館のさらなる省エネルギー化に向けた提案を報告書として取りまとめていきます。

④診断報告
現地診断からおおよそ1か月後、診断結果の報告会が行われます。



報告会では、調査結果に基づき、具体的な改善提案および改善策を実施した場合の効果が示されました。

照明設備では、投資改善に向けた施策として、照明のLED機器への更新が提案されました。コザ信用金庫別館では、主要な執務室ではLED機器が導入されていますが、使用頻度の小さい一部の部屋では引き続き蛍光灯を使用しており、これをLED機器に更新することで、年間およそ57,000円のエネルギーコスト削減につながるとのことです。
空調設備では、投資改善に向けた施策として、より省エネ性能の高い設備への更新について2パターンの提案があったほか、運用改善に向けた施策として、空調の設定温度を1℃見直すことで、執務環境の快適性を大きく損なうことなく省エネ化を図ることが提案されました。
報告会における省エネ化に向けた提案を受け、総務部の古堅副部長は、「提案いただいた内容はいずれも具体的で、建物のエネルギー使用の状況と省エネ化の余地について把握することができました。設備改善については、投資にかかる費用と効果のバランスをみながら検討していくことになりますが、特に照明のLED化については、2027年までに蛍光灯の製造・輸出入が廃止になることも踏まえつつ、優先的・計画的に取り組みたいと考えています。」と所感を述べました。
また、地域の事業者のサポートに取り組む企業支援部の塩川調査役は、「今回の省エネクイック診断受診を通じて、診断の流れを把握するとともに、診断報告における提案内容がどのようなものになるのか、イメージすることができました。どんな業種の事業者であっても、何らかのエネルギーを使用して事業活動を行っていますので、エネルギーコストの削減につながる可能性のある省エネ診断の受診は、多くの事業者にとってメリットのあることだと考えています。今回の受診を踏まえ、地域において省エネ診断の活用に向けた提案活動を一層進めることで、事業者の経営をサポートするとともに、沖縄市のゼロカーボンシティ実現につなげていきたいと思います。」と意気込みを語りました。
⑤お支払い
④の診断報告終了後、受診事業者は診断機関に所定の料金を支払い、省エネクイック診断は終了となります。
さいごに
今回、コザ信用金庫では、簡単な申込手続きで省エネクイック診断を受診し、短期間のうちに専門家のアドバイスを受け、一層の省エネルギー化に向けた取組みを進めるためのヒントを得ることができました。
カーボンニュートラルの実現に向けた取組みは、事業者にとって「コストや手間のかかるもの」というイメージを持たれがちですが、省エネルギーにかかる取組みは、コストの削減を通じて経営上のメリットをもたらす可能性があるほか、費用をかけずにすぐに取り組むことができる施策もあります。
「沖縄市ゼロカーボン推進窓口」は、省エネの専門家と連携し、皆様の省エネに向けたお取組みを全力でサポートいたします。ご関心のある沖縄市内の事業者さまは、ぜひ「沖縄市ゼロカーボン推進窓口」にご連絡ください。
※本稿においてコザ信用金庫が受診した「省エネクイック診断」は、「令和5年度補正予算 中小企業等エネルギー利用最適化推進事業費(中小企業等に向けた省エネルギー診断拡充事業)」にもとづくものです。